映画のあらすじや内容を踏まえた感想など、ネタバレ要素がある記事ですので、これから映画をご覧になる方はご注意ください
映画『ウォルト・ディズニーの約束』概要
題名に『ウォルト・ディズニー』とあるので、ウォルトの伝記的な映画だと思ってディズニープラスで鑑賞し始めたのですが、
実際は、有名なディズニー映画『メリー・ポピンズ』の誕生秘話についてのお話で、
しかも、テーマは『トラウマ』。
なので全体的に暗いです。
大人向けの作品だと思います。
トラウマを抱える方にはぜひ観てほしい作品だと思いました。
私自身も、子供時代の家庭にあまり良い思い出がなく、しかも、作品中で明らかになっていく、トラヴァース夫人の子供時代の状況と、自分の子供時代の状況が驚くほど似ており、正直、中盤は観るのがとてもつらかったです。
しかし、映画後半は、トラウマの癒しへと向かい、映画の最後はハッピーエンドといってよい結末で、観ている最中は心が苦しかったけど、この作品と出会えてよかったと心から思う作品でした。
キャスト・あらすじ
キャストには、実力派俳優&女優の名前がたくさん!
ウォルトを演じているのは、なんとトム・ハンクスです!
キャスト・吹き替え担当
- P.L.トラヴァース:エマ・トンプソン/塩田朋子
- ウォルト・ディズニー:トム・ハンクス/安原義人
- トラヴァース・ゴフ:コリン・ファレル/津田健次郎
- ラルフ:ポール・ジアマッティ/石住昭彦
- リチャード・シャーマン:ジェイソン・シュワルツマン/小森創介
- ドン・ダグラディ:ブラッドリー・ウィットフォード/根本泰彦
- ロバート・シャーマン:B・J・ノヴァク/下崎紘史
- マーガレット・ゴフ:ルース・ウィルソン /高橋理恵子
- ギンティ:アニー・ローズ・バックリー/大室佳奈
- エリーおばさん:レイチェル・グリフィス/相沢恵子
P.L.トラヴァース夫人を演じるエマ・トンプソンは、ハリポタのトレローニー先生(占い学の先生)を演じた女優さんです!
あらすじ
あらすじは、ディズニー公式サイトの記載を引用してご紹介します。
ディズニー公式サイトでは、映画『ウォルト・ディズニーの約束』について、以下のように紹介されています。
ウォルト・ディズニーは、“ミッキーマウス”の生みの親にして、“夢と魔法の王国「ディズニーランド」”の創造主、そして歴代最高の26ものアカデミー賞(R)受賞という記録を誇る伝説の映画人─世界中の誰もが知る数々の名作を作り続けてきました。本作は、そんな彼自身と彼の映画製作の裏側を初めて描いた、感動のドラマです。
『メリー・ポピンズ』の映画化に向け、情熱を燃やし続けるウォルトにとって唯一にして最大の障害─それは映画化を頑なに拒む原作者P.L.トラヴァース。誰もが不可能と思ったこの映画製作は、どのような“魔法”で実現できたのでしょうか?そして、ふたりの間に交わされた“ある約束”とは…?
世界の誰もが知るウォルト・ディズニーを演じるのは、アメリカきっての人気者であり、オスカー俳優のトム・ハンクス。彼を悩ませる頑固者のトラヴァースには、同じくアカデミー賞に2度輝いたイギリスの名女優エマ・トンプソン。夢を伝えるストーリーテラー同士が、すれ違いながらも互いの心にある”想い“に触れる様を描いています。
さらに、幼いころのトラヴァースの父親トラヴァース・ゴフ役にコリン・ファレル、その妻マーガレットにルース・ウィルソン、マーガレットの姉、エリーおばさんにレイチェル・グリフィス、トラヴァースの心を開く運転手ラルフ役にはポール・ジアマッティといった豪華出演陣が脇を固めます。
引用元:ディズニー公式サイト
ネタバレを含みますので、映画を鑑賞後にご覧いただくことをお勧めします。
幼少期に継続的なストレスを受けると、大人になっても長く引きずる
トラヴァース夫人が気難しい性格なのは、幼少期のトラウマのせい!
主人公で、メリーポピンズの原作者であるトラヴァース夫人は、かなり気難しい性格に描かれており、ウォルトやディズニースタジオの社員たちにも嫌味ばかり言っていました。
ときおり流れる、トラヴァース夫人のフラッシュバックのような過去の記憶から、夫人は、幼少期の家庭に対するトラウマから、周囲に対してそのような態度をとっているということがだんだんわかってきます。
彼女のトラウマの原因は、アルコール依存症たった父、父のことを不安がる母親、父との死別などです。
トラヴァース夫人がトラウマを引きずりつづけているのは、父親との死別が大きな原因であることはもちろんですが、
幼少期において、長期&継続的に、不安&緊張状態に置かれていたことが大きな原因だと思います。
トラヴァース夫人の父親は、アルコール依存症で、そのせいで転職もしており、家族は、慣れない土地への引越しを強いられたりしています。
トラヴァース夫人は長女で、記憶の中では小学生ぐらいの少女ですが、子どもながらに家庭の不穏には気づいており、両親や妹たちには笑顔で対応していますが、心の中では大きな不安を抱えていて、つねに緊張しているという様子が伝わってきました。
トラヴァース夫人の性格が歪んでいるように見えるのは、このような幼少期を過ごしたからだと思いました。
物語終盤で、ディズニーランドのメリーゴーランドをばかにするトラヴァース夫人の記憶の中に、メリーゴーランドをうらやましそうに眺める幼少期のトラヴァース夫人の描写も出てきています。
トラヴァース夫人くらいの年齢になっても、幼少期のトラウマが原因で、関係ない人に厳しく接したりするのは、『引きづりすぎ』かもしれません。
しかし、そのような大人にしてしまうほどの、幼少期に受けるストレスの影響の恐ろしさを、この映画を通して再確認しました。
こちら(↓)の書籍では、長期にわたるストレスが、トラヴァース夫人のように、思春期以降の対人関係に影響を及ぼし、それが「生きづらさ」に繋がるといった内容が詳しく説明されています。
「生きづらさ」を感じている方に、おすすめの一冊です。
ウォルトもまた、つらい幼少期を過ごしていた。
なかなかメリーポピンズの映画化を許可しない頑固なトラヴァース夫人の心を溶かしたのは、
ウォルトの幼少期についてのある告白と、それに対するウォルトの考え方でした。
その告白とは、『ウォルト自身も、思い出すのもつらいほどの幼少期を過ごした』というものです。
ウォルトの厳格な父親は、アメリカのミズーリ州で新聞屋を経営していて、
金銭面に対しても厳しかったため、新聞配達員は雇わず、当時8歳のウォルトと、ウォルトのお兄さんのロイに朝刊と夕刊(それぞれ1000部ずつ!)の配達をさせていたそうです。
ウォルトのお父さんの躾は、現代なら絶対に虐待と言われる、衝撃的なもので、とてもショックでした…。
そんなお父さんのことを、「父親のことは尊敬しているしすばらしい人間だ」と言いますが、
一方で、「雪の中で、辛い思いをしている8歳の少年の姿を思い出さない日は1日もない。」と言っています。
ウォルトほどの成功者でも、幼少期のトラウマを完全に拭い去ることはできないといんですね…
ウォルトの提案「トラウマを抱えていても前を向いて生きよう」
幼少期のトラウマをトラヴァース夫人に告白したウォルト・ディズニーですが、
「トラウマを抱えて暗い気持ちのまま毎日生きるのは辛すぎるし、とても疲れる。
お互いもう過去に支配されない生き方をしよう。」
という提案をします。
また、そのときに、
「我々、物語を作るものは、想像力で悲しみを癒す。」
とも言っています。
ウォルトは、自身の作品で一番好きな作品は『シンデレラ』だと語っていたそうです。
『信じていれば夢は必ず叶う』というシンデレラーのストーリーは、ウォルト自身の人生そのものなんですね。
※作品中で、ウォルトとトラヴァース夫人がメリーゴーランドに乗るシーンで、メリーゴーランドから流れていた曲も、『シンデレラ』の楽曲『夢はひそかに』(A dream is a wish your heart makes)でした。
ウォルトが映画で語っていたような幼少期を過ごしたら、私なら夢も希望も持てない大人になりそうなものですが、
決して希望を捨てず、夢や希望を次々と実現させ、また、世界中にも夢と希望を届けたウォルト・ディズニーは、信じられないほど強く偉大な人だと改めて感じました。
愛する人は、亡くなっても心の中で生き続ける
作品後半で、ウォルトは、『メリーポピンズ』の影の主人公は、舞台となる家庭の父親『バンクス氏』であること、また、バンクス氏は、トラヴァース夫人が、自身の父親を投影して作られたキャラクターであることに気づきます。
そして、題名にもなっている『約束』について言及します。
その約束とは…
ウォルトの2人の娘と交わした、娘たちが大好きな本である『メリーポピンズ』映画化の約束を必ず実現させること
メリーポピンズを映画化する際には、『バンクス氏』を決して悪く描かず、メリーポピンズによりバンクス氏が救われる内容とすること
です!
ウォルトが二人の娘さんをとても大切に想っていることが伝わってきますね。
こうして、メリーポピンズは映画化され、全世界に公開され、その後も愛され、視聴され続けるディズニー映画の代表作となりました。
メリーポピンズの中には『風』に関する描写がたくさん出てきますが、
『ウォルト・ディズニーの約束』では、トラヴァース夫人のお父さんが風について幻想的に語る場面が何度も出てきていました。
つまり、トラヴァース夫人のお父さんは、『メリーポピンズ』の中の登場人物『バンクス氏』として描かれているだけでなく、トラヴァース夫人の作品自体に大きな影響を与えている存在なんですね。
亡くなったお父さんの、トラヴァース夫人への影響は、心の傷という悲しいものだけではなく、彼女の才能面や作風にも大きく影響を与えているんですね。
結果的に、お父さんがトラヴァース夫人を社会的な成功に導いてくれたという見方もできます。
つまり、お父さんは、亡くなったあとも、彼女の中で生き続け、彼女に大きな影響を与え続ける存在であるということですね。
ウォルトの言葉や、「メリーポピンズ」の映画化が成功を収めることで、
彼女の中の、父の死に対するネガティブな気持ちがだんだん消えていき、
前向きな気持ちになったであろうトラヴァース夫人が描かれた場面で映画は終わります。
映画が彼女の希望通りの形で公開され、彼女のお父さんに対する気持ちもやっと報われたんですね。
ちなみに、この映画の英語圏での題名は、「Saving Mr. Banks」(バンクス氏を救え)なんです。(日本語の題名とすごく違うので驚きですよね!)
つまり、仕事でうまくいかず、つらい死を遂げたトラヴァース夫人のお父さんをモデルにしたバンクス氏を、映画で幸せな結末に導いて救おうということだったんですね。
バンクス氏がどのように救われたのか気になる方は、『メリー・ポピンズ』をぜひご覧ください!
トラヴァース夫人が、人々との関わりから得た気づき
物語は、ウォルトとトラヴァース夫人を中心に進行していきますが、ディズニースタジオに勤める音楽担当のシャーマン兄弟や、運転手ラルフとの交流も、とても見ごたえのあるものとして描かれています。
トラヴァース夫人は、運転手ラルフに対しても、初めからとても不機嫌に接していました。
しかし彼は、どんな嫌味にも決して屈することなく、いつもプロとしての対応をします。
そして、送迎の間に、トラヴァース夫人の心の影に気が付いたラルフは、自分自身の身の上話をします。
「最愛の娘には、体に不自由があり、車いすで生活している。
車いすの彼女を外に連れて行ってあげらるかいつも天気が気になり、将来についても案じてる。
そんな自分の事情を周りのだれも気付いていないだろうが。」
と。
そのときに、トラヴァース夫人は、自分だけが不幸だと思い込み、ラルフにつらくあたってしまっていたことに気づきます。
でも、悲しみの中にいる最中は、自分だけがとても不幸なんだという気分に誰しもなってしまいますよね。
不安や悲しみは、人間の視野を狭くしてしまう働きがあると感じています。
だからといって、心の中の悲しみから目を背けるのも、知らず知らずのうちにストレスを増大させる原因になり、よくないと思います。
『悲しい気持ちにも正直になり、悲しい気持ちを受け入れることができたら、意識して、視野を広げる。』
という、感情のコントロールがうまくできるようになるといいなと思っています。
さいごに
つらい過去を抱えていても、夢を実現させるディズニーの前向きさに、心を打たれた作品でした。
またウォルトは、なかなか映画化を許可しないトラヴァース夫人に対し、20年間説得を続けたそうで、ウォルト・ディズニーの、「本当にいいと思うものを追求する姿勢や、自分が求めているものに対して一切妥協をしないという姿勢」にとても驚きました。
その姿勢が、ディズニーの映画作品やパークのクオリティの高さにつながっているんですね。
ディズニー作品やパークは、キャラクターたちが素敵なのはもちろん、音楽・建築などの芸術性もとても高いですよね。
特に、わたしはディズニー音楽が大好き(映画作品の音楽もディズニーランド&シーの音楽も両方大好きです)なので、音楽についてはまた別記事を書きたいと思っています♪
記事には書ききれませんでしたが、この映画はメリーポピンズ誕生秘話なので、メリーポピンズの楽曲誕生秘話などもたくさん出てくるので、ディズニー音楽が好きな方にもおすすめです♪
今後も落ち込んだときなどに何度も見返したいと思う映画でした^^